生活保護費:「基準引き下げ」は予算編成のつじつま合わせ(毎日新聞)

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071201k0000m010016000c.html
毎日新聞 2007年11月30日 18時18分

 厚生労働省の検討会議(座長・樋口美雄慶応大商学部教授)が30日にまとめた報告書は、厚労省生活保護カットを可能とする「お墨付き」を与えるものだ。検討会は約40日で結論を出したが、社会保障費の削減項目の提示を迫られる、12月中旬の08年度予算編成に間に合わせるためだった。

 生活保護費のうち食費など生活扶助の見直しは、受給世帯の月収を、収入の下位から1割にあたる非受給世帯の月収水準にそろえるのが基本。夫婦と子供の3人世帯を標準とし、標準世帯で比較することを軸にしている。ところが報告書は、単身者を標準とするよう提言した。「受給者の7割が単身者だから」がその理由だ。

 しかし、受給世帯と非受給世帯の収入を比べると、3人世帯では受給世帯(15万408円)が1627円多いだけだが、単身者(60歳以上)だと受給者(7万1029円)が非受給者を8378円上回る。単身者は食材などの大量購入による節約が難しく、生活必需品の価格を積み上げて決める扶助基準が高く設定されがちだ。報告書が単身者を標準としたのは、扶助基準の引き下げ幅をより大きくすることも可能とするための布石だ。

 厚労省がこの時期、生活保護費の削減を可能としたのは、08年度も社会保障費を2200億円圧縮しなければならないのに、削減項目が詰まっていないことがある。

 1000億円程度を見込む政府管掌健康保険の国庫負担削減案が難航しており、予備に別の財源を用意する必要が生じている。政管健保の削減幅が縮小すれば、それとは関係ない生活保護費の削減幅が大きくなる構図で、国民の最低限度の生活を保障する制度が、予算編成のつじつま合わせに使われようとしている。【吉田啓志】