生活保護:扶助基準引き下げ容認 「なぜ値上げ続く今」 受給者「許せぬ」悲鳴(毎日新聞)

毎日新聞 2007年11月30日 西部夕刊
http://mainichi.jp/seibu/seikei/news/20071130ddg041010006000c.html

 ガソリンも食料品も上がっているこの時期に、なぜ−−。厚生労働省の検討会が示した生活保護基準の引き下げ方針に、申請を受け付けない「水際作戦」などが批判され保護行政の転換を図っている北九州市(約1万800世帯受給)や、約1万9000世帯が受給する福岡市でも波紋が広がっている。東京・霞が関厚労省前では方針に反対する日雇い派遣労働者の労組などの市民グループが抗議の声を上げた。【古川修司、反田昌平】

 生活保護は、生活困窮者の生活を支える「最後のセーフティーネット」と言われ、引き下げは受給者にとって死活問題。70歳以上を対象に一定額を上乗せする老齢加算が06年度に全廃され、段階的削減が続く母子家庭への加算も09年度に全廃されるなど費用削減が続いている。

 北九州市では生活保護を受給できなかったり打ち切られ困窮した人が孤独死する事件が相次ぎ、窓口対応の改善や自立支援のための福祉専門職の配置などを進めている。だが、小村洋一保健福祉局長は「基準の見直しは制度の根幹にかかわる問題。運営の見直しとは次元が違う」と説明する。福岡市の半田俊幸市保護課長も「低所得世帯との逆転解消など厚労省の方針を説明したい」と話した。

 一方、生活保護に関する相談を受け付けている北九州市社会保障推進協議会の飯田富士雄事務局長は「物価が上がる中、保護費が切り下げられると、最低限度の生活を維持できない」と批判。協議会には「自分もぎりぎりの生活だ。税金も保険料も払わず、保護費を多くもらうのはけしからん」という電話がかかってくることも明らかにした。

 低所得者対象に生活相談や支援をしている「福岡県生活と健康を守る会連合会」の梅崎勝会長は「格差が広がる中、低所得者と比較して保護費を引き下げるのなら、国は低所得者の生活実態も検証すべきだ」と反発した。

 ホームレス自立活動に取り組むNPO北九州ホームレス支援機構(北九州市八幡東区)の森松長生常務理事は「格差が広がるなか、貧困層の底上げこそ課題。全体的な生活水準を底上げすべきなのに、痛みを弱者に強いるのは逆行している」と訴えた。

 老齢加算廃止取り消しを求める訴訟の原告の一人、東京都調布市の八木明(めい)さん(81)は「老齢加算の1万7930円が切られ、食費を切り詰めた。洋服はもう何年も買っていない。弱いところから切る国のやり方は許せない」と話した。