生活保護:市民グループ「命守って」訴え 引き下げ方針

毎日新聞 2007年11月30日 11時34分
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20071130k0000e040050000c.html

 厚生労働省の第5回生活扶助基準に関する検討会に抗議してビラを配る市民グループのメンバー=東京・厚生労働省前で2007年11月30日午前11時18分、馬場理沙撮影 ガソリンも食料品も上がっているこの時期に、なぜ−−。厚生労働省の検討会が生活保護基準の引き下げを容認する報告を出した30日、東京都千代田区の同省前では、反対する市民グループなどが「私たちはぎりぎりのところで暮らしている。命を守って下さい」と訴えた。

 生活保護は、生活困窮者の日常生活を支える「最後のセーフティーネット」と言われる。その引き下げは受給者にとって死活問題。生活保護を巡っては、70歳以上を対象に一定額を上乗せする老齢加算が06年度に全廃され、段階的削減が続く母子家庭への加算も09年度に全廃されるなど、費用削減が続いている。

 この日、抗議活動をしたのは▽日雇い派遣労働者の労組▽生活保護受給者の支援グループ▽障害者団体などが連携した「反貧困ネットワーク」(代表・宇都宮健児弁護士)などのメンバー。

 老齢加算廃止の取り消しを国に求めて東京地裁に提訴した原告の1人、東京都調布市の八木明(めい)さん(81)は、バセドー病の長女(55)と暮らす。八木さんは「老齢加算の1万7930円が切られ、食費を切り詰めた。洋服はもう何年も買っていない。弱いところから切る国のやり方は許せない」。3児の母で入退院を繰り返しているという北海道小樽市の佐賀光江さん(41)は「長男を高校に行かせたい。母子加算が削られ、灯油も値上がりし苦しい。風呂を週2回に減らした。これ以上何を削ればいいのか」と話した。

 引き下げは子供の就学援助などの政策にも影響を与えかねない。ネットワークの湯浅誠事務局長は「生活保護を受けないで済む社会を作るべき国が、貧困層を圧迫しており断じて許せない」と批判した。同ネットは検討会に対抗し、当事者が参加した「生活扶助基準に関するもう一つの検討会」を12月7日に開催する予定。【東海林智、市川明代】