反貧困フェスタの報道:中日新聞社説「中日春秋」

2008年3月30日

 なぞなぞである。「よく見ているのに、いろいろなものの陰に身を隠しているため、正体が見えにくいものは」。答えは「貧困」。昨年十月に発足した反貧困ネットワーク湯浅誠事務局長の持論による


▼世の中には自殺や多重債務、不法な派遣労働、児童虐待、学校給食費の未払いなど問題が山積している。別々に対策を考えがちだが、ホームレス支援などに長年取り組んできた湯浅さんの目には、いずれも貧困が原因にあると映っている


▼夫の暴力から逃げてパートで働いていたら不当な解雇にあい、福祉事務所に相談したら追い返される。生活苦からあちこちで借金をしたがストレスがたまってわが子を虐待…。雑誌『世界』の対談では、貧困による悪循環があることも訴えている


▼JR岡山駅での突き落とし事件も、同じように考えることができるのかもしれない。犯人の十八歳の少年は、経済的な理由で大学進学をあきらめた。さらに就職先が決まらない事態まで


▼東京都内の中学校で昨日、反貧困ネットワーク主催のイベントが開かれ、七十を超す団体が参加した。隠れている貧困をどう伝えるかがテーマ。早く手を打たないと、取り返しがつかなくなるという危機感がある


▼本来は、為政者にもっていてほしい。ないのは正体が見えないためか、見えないふりをしているためか。いずれにしても怠慢である。