「貧困」の実態をきちんと伝えよう! 豊かさのなかの貧困問題─反貧困フェスタ2008(Ohmynews)

渋井 哲也(2008-03-30 13:35)
http://www.ohmynews.co.jp/news/20080329/22756

 貧困問題を解決するために、実態をきちんと伝えようと、「反貧困フェスタ2008 貧困をどう伝えるか」(主催・反貧困ネットワーク)が3月29日、 東京・千代田区の区立神田一橋小学校で開かれた。来場者は約1600人(主催者発表)で、ワーキングプア生活保護問題、非正規雇用の労働問題などを考えた。


 生活保護については、安倍晋三・前首相の「骨太の方針2006」で、(1)生活扶助基準は、低所得者世帯の消費実態などをふまえた見直しをする、(2)母子加算は、就労支援を講じつつ、廃止を含めて見直す──などとしていた。これを受けて厚生労働省は、社会援護局長の私的検討会として「生活扶助基準に関する検討会」(座長、樋口美雄・慶応大学商学部教授)を設置して、年齢や世帯人員、地域別の支給基準の見直しを検討してきた。


 そして、「消費実態は縮小している」などとする2007年11月にまとめた報告書にもとづいて、支給基準を引き下げる方向になっていた。しかし、原油高が保護世帯の生活に与える影響や与党内での「弱者切り捨てと言われかねない」などの声があり、支給基準見直しについては1年先送りされている。


 この問題について、「そうだったのか!生活保護マニアック講座」の中で、同検討会の委員を務めていた岡部卓・首都大学東京都市教養学部教授(社会福祉学)が「生活扶助基準をどうとらえるか」と題して、解説を行った。


 岡部教授は、まず、生活保護基準の算定方式が、最低生活を維持するのに必要な費目をあげる「マーケット・バスケット方式」から、次いで、家計に占める飲食費の割合を測定する「エンゲル係数方式」、さらに、一般世帯との格差を縮小する「格差縮小方式」から、一般国民の生活水準との均衡をはかる「水準均衡方式」へと変化してきたことを説明し、


 「(現在の水準均衡方式は)低所得世帯との比較の中で検討されているが、それが最低生活に見合った水準なのかどうかの議論はない。この方式は、消費水準が上昇すれば、支給額も上がるが、消費水準が下がれば、支給額も下がるというもの。この方式の課題としては、『これだけは譲れない』という貧困基準が示されていない」


と話した。その上で、厚労省局長の私的検討会が、「そもそも、この方式が妥当かどうか」といった議論ではなく、この方式の技術的な問題が話された場だったとし、生活保護基準をきちんと議論できる常設の第三者機関が必要と主張した。


 「飢餓があるといった絶対的な貧困ではなく、豊かさの中での貧困問題を研究者らがきちんと理論化してこなかった。ホームレスの増加やワーキングプアの問題は、貧困問題の問い返しが迫られている」(岡部教授)


 また、生活保護世帯には現在、病院やクリニックへの通所、デイケア・ナイトケア・作業所への交通費として「移送費」が支給されることになっているが、今後は、福祉事務所の管轄内以外への移動には、交通費を認めない方針になっている。病院などは医師との相性なども重要であるため、管轄外に通っている人も少なくないが、こうしたケースには支払われなくなる。


 この問題などをめぐって、生活保護問題対策全国会議などは3月31日、「生活保護の通院移送費と母子加算の削減中止を求める厚労省への要請行動と院内 集会」を行うことになっている。

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