生活危機:08世界不況 定額給付金、募る不安 必要な人に届くの?(毎日新聞)

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081118ddm041040014000c.html
毎日新聞 2008年11月18日 東京朝刊

 ◇弁護士らが首相に質問状 DV被害の女性「住民票が基では…」
 具体的な支給方法が決まっていない定額給付金について、弁護士らでつくる生活保護問題対策全国会議(尾藤広喜代表幹事)などが17日、路上生活者らにどのように給付金を行き渡らせるのかを問う公開質問状を麻生太郎首相に送った。会見には、夫の暴力(DV)を逃れるため家を出た40代の女性が同席し「1万2000円で靴が買えると喜んだが、住民票を移せない私はもらえないのか」と訴えた。総額2兆円に上る給付金は必要な人に届くのか。疑問が広がっている。【佐藤浩、町田徳丈】
 与党が支給を決めた定額給付金は、所得制限をするかどうかの判断や支給事務を丸投げされた市町村から反発の声が上がり、多くは制限を設けない方向だ。一方で支給方法の詳細も決まっておらず、住民登録に基づいて支給された場合、ホームレスや「ネットカフェ難民」、派遣切りで寮を追い出された人など、生活困窮者が受け取れない恐れがある。
 生活保護問題対策全国会議は、こうした問題点を踏まえ▽具体的な支給方法▽生活保護受給者が受け取った場合、保護費が減額されるか否か▽在日外国人を支給対象とするかどうか−−などをただし、2週間以内の回答を求めた。
 会見した女性は、夫からの暴力でうつ病になり、2年前に自宅を出た。夫に現住所を知られないよう現在も住民票を移していない。生活保護を受けながら事務のパートをして1人で暮らしている。女性は「1カ月の食費が1万6000円の私には、定額給付金の1万2000円は非常に大きな意味がある。しかし住民票が基になると、もらえない」と心配を口にした。そして、「どうか、今住んでいる場所を尊重してほしい。誰のための何の支援か考えて」と続けた。
 支給については、このほかにも、さまざまな生活弱者から注文の声が上がっている。
 東京・上野公園で暮らすホームレスの男性は(63)は「青空の下に住んでいるけど、同じ国民であることに変わりはない。行政も我々の人数を把握しているはずだから、職員が公園に来て申し出た人に配る方法もあるんじゃないか」と話す。男性は週に1、2回、日雇いで清掃や草むしりのアルバイトをして生計を立てている。
 「住民票のある実家に通知が来たとしても、帰るに帰れない」。公園で暮らす人たちからは、そんな声も聞かれた。
 円高に苦しむ早稲田大の女子留学生(19)は、アルバイトの回数を増やして生活を切りつめている。来日して1年半余。大学卒業までは日本にいるつもりだが「どんな人がもらえるのか、どんな条件が必要なのか、制度の仕組み自体がよく分からない」と情報不足に戸惑っていた。