非正規労働者らの年越し支援、各地で食事や居場所提供(朝日新聞)

朝日新聞 2009年1月1日

 「派遣切り」などで仕事と住まいを奪われた労働者に、食事と居場所を提供する「年越し派遣村」が31日、東京の官庁街の近くにある日比谷公園に開村した。労組や市民団体による実行委員会が年越しそばなどを出し、労働・生活相談に乗った。

 この日、非正規労働者ら約130人が「村民」として登録。駆けつけた約360人のボランティアらが炊き出しや届いた支援物資の運搬、銭湯への案内を手伝った。

 ビル街の夜景がまばゆい大阪市北区扇町公園でも同日夕、炊き出しがあり、ボランティアの若者らが約80食分のビビンバと豚汁を振る舞った。食事の後、若者らとたき火にあたった男性は「いろいろと苦労があるけど頑張っていかないと」。

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 大みそか、「派遣切り」などで不安な年越しを迎えた各地の労働者たちは、支援者たちが用意した居場所にひととき身を寄せ、温かい食事で体を温めた。

 東京・日比谷公園の「年越し派遣村」を訪れた男性(41)は、大手自動車メーカーの群馬県の下請け工場で派遣の仕事を切られたという。約2カ月間、ネットカフェや野宿でしのいできた。所持金は1千円ほど。温かい食事や寝場所が確保できると聞き、大みそかに身を寄せた。

 「『このまま野垂れ死んでもいいかな』と思った時もあったが、今ほど人の情けを感じたことはない」

 実行委員会によると、寄せられた30件の相談では、所持金ゼロや数十円という人も多く、ほとんどが生活保護を申請する必要がある。山口県新潟県で仕事を失い職探しのために東京に来たが、行く当てもなく途方に暮れている人もいたという。

 広島市の市民団体「野宿労働者の人権を守る広島夜回りの会」は31日夕、広島市民球場前で路上生活者ら約50人におせち料理と温かいお茶、携帯カイロなどを配った。

 解体工事などをしていた男性(45)は給与が少ないので派遣会社を辞め、9月ごろからJR広島駅前の地下街で暮らしているという。「通行人の視線や声が気になり、路上生活は嫌だ。とにかく働きたいと思うが、すぐに切られる派遣は……」と不安を漏らし、「安心できる正社員として働きたい」と話した。

 大阪市北区扇町公園の炊き出し会場では、最大30人が寝泊まりできる三つのテントを公園内に張った。「派遣切り」で利用者が増えるのを見越し、追加のテントも二つ準備して5日朝まで提供する。

 周辺を夜間パトロールして野宿者を支援しているボランティアの男性(28)によると、1年前から、派遣切りにあったという20〜40代の人が目立つようになったという。男性は「みんなで助け合って厳しい冬を越したい」と話した。