廃止の生活保護「母子加算」復活法案、野党4党共同提出(朝日新聞)

朝日新聞 2009年6月4日
http://www.asahi.com/edu/kosodate/news/TKY200906040322.html

 生活保護を受けるひとり親世帯に支給されてきた「母子加算」が今年4月に全廃されたのに対し、民主、共産、社民、国民新の野党4党は4日、加算を復活させる法案を衆議院に共同提出した。「高校進学の断念など深刻な影響が出ている」として、政府による詳細な実態調査の結果が出るまでの間、段階的廃止が始まる前の04年度以前の水準に戻す内容だ。

 小泉政権時代の03年、「骨太の方針」に生活保護の見直しが明記され、母子加算は16歳以上の子どもでは06年度末、15歳以下では08年度末で支給は打ち切られた。加算削減が、社会保障費の伸びを毎年2200億円抑える材料に用いられてきた経緯がある。野党の見積もりで、「復活」に必要な財源は年180億円だ。


 この日の民主党の会合に招かれた母親は、「加算がなくなり、ぎりぎりの生活。本当に大変で、復活してほしい」と訴えた。


 厚労省は、加算廃止の根拠として一般の母子世帯とのバランスを挙げる。母子加算と生活扶助を合わせた額は、全国消費実態調査(99年度)による平均的な母子世帯の消費支出額を上回るからだ。一方、廃止の「代替措置」として、厚労省は07年度から就労支援の仕組みを導入。働いて月3万円以上の収入を得れば1万円、収入が3万円未満や職業訓練中の場合は5千円を支給するようにした。


 05年度からは生活保護世帯全体を対象に「高等学校等就学費」を創設。義務教育までだった教育費の支給対象を高校まで広げ、公立高校の授業料や教科書代などは実費で支給されるようになった。ただ、私立高校の授業料の差額分や修学旅行費などは出ない。


 09年度補正予算で、生活保護世帯の家庭学習支援に42億円を盛り込み、小学生に月額2560円、中学生に4330円、高校生に5010円を上乗せする。


 ただ、野党は、就労促進費では病気や障害で働けない世帯(約3.2万世帯)がカバーされていないと、その有用性に疑問を投げかける。また、加算廃止の減額分(国庫負担ベースで約200億円)は、新規施策の総額を「大幅に上回る」と指摘した。


 加算廃止を含め保護基準の引き下げなどは厚労相の告示で定められ、法改正は必要ない。野党が加算復活のため法案提出の手法を採ったのは、加算支給に法的義務をかけて確実に実施する目的とともに、国会での議論に持ち込む狙いもある。


 与党内では、加算廃止の影響を受けた家庭への対応について、「単純に元に戻すのではなく、『子どもの支援』に特化させるとか、別の形を取るべきだ」(幹部)という声が出ている。


 母子加算の廃止をめぐっては、生存権を保障した憲法違反だとして、これまでに母子世帯が京都や青森など5地裁に提訴。08年12月の広島地裁判決では、請求が退けられた。